継続は力なり 其の二
(※前回 ”其の一” はこちら)
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〜配置薬屋〜
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薬屋といっても「ドラッグストア」のことではない。
田舎の家庭には常備薬箱が備わっている。
この配置薬のシステムの発祥の地は富山。
昔は大きな”こうり”を大風呂敷で背負い、各家庭に薬を売り歩いていた。
通称「富山の薬売り」。
今でも昔からの家には薬箱があり、定期的に薬の交換をする商売をしている人がいる。
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その薬屋のおじさん。Yさん。
我が家とはもう40年近くの付き合いである。
年2回、春と秋に使った薬の補充、入れ替えに来てくれる。
車から大きな革の鞄を担ぎ、それを開けると何段ものこうりに薬がびっちり詰まっている。
我が家は葛根湯、胃薬、栄養ドリンク、カット絆、普段から結構使用して重宝している。
革鞄もこうりも年季が入っている。
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薬屋 Yさんの顧客はこの伊那谷に1600軒くらいあり、親子三世代に渡り付き合いのある家庭もある。
小学生だった子が今はお父さんお母さんになり、子供もいる家庭になっている。
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昔は風船を子どもに膨らませてあげて喜ばれたが、今の子どもは全然興味を示してくれないという。
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気さくな人柄で、色々な世間話をしていく。
伊那谷の地域のことも家庭のこともたくさん知っているようだ。
それにしても1600軒もある家庭を年2回訪問することは家の事情、場所を頭に入れておかなければならないし、
家に帰り使った薬の売り上げ、補充、在庫、その週の予定を一人で行わなければならないとのこと。
それが仕事とはいえ、誰にでも簡単にできることではないと思う。
まさに「継続は力なり」。
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自宅は奈良にあり、
薬で稼いだお金で屋根に重たいほどの瓦と太い梁、太い大黒柱の80坪近い豪邸がある。
月にいっぺんは帰郷するというが、
伊那の地域でこの商売を始めて45年を過ぎ、この地の方がはるかに長いと言っていた。
気さくで几帳面な人である。
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「私の後継ぎのことを考えるとなかなか頭が痛い」と言っていた。
我が家との付き合いはこれからも長く続くと思う。
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T. Ito