焼き栗

日曜日の遅い午後、
昔から使っていた焙烙(ほうろく)で栗を煎り、焼き栗にする。

今年採れた栗は大粒で豊作だった。

皮の焦げる匂いと栗の甘い匂いがしてきた。

よく冷えた白ワインを飲みながら、できあがった焼き栗を頬張る。
白ワインと焼き栗はシンプルで相性が良い。

夕暮れが近づいて、寒くなってきたので焚き火を大きくする。

三週間前に97歳で世を去った母親のことを思う。

自宅で家族に見守られて、
さほど苦しまずに母親の命の炎が消えた。

丈夫な体に育ててくれ、67年間見守っていてくれた。

息子にとって母親の存在というのは、
いくつになっても大きく、永遠のものだ。

焚き火をしながら、亡き母に感謝し冥福を祈った。

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T. Ito